2021.10.12

小松菜の土耕栽培における「液体たい肥 土いきかえる」の効果

環境大善株式会社 土、水、空気研究所は、株式会社リバネス 農林水産研究センターと牛の尿を微生物により分解した液体「液体たい肥 土いきかえる(以下、土いきかえる)」の植物への施肥効果について共同研究を進めてきました。

本試験では、土いきかえるを小松菜の土耕栽培へ用いることで、SPAD値、クロロフィル量、収量の増加、根張りの向上が明らかとなりました。さらに、土いきかえるを用いた区画の小松菜は、ブラインドテストにてえぐみが最も少ないとの回答があり、土いきかえるの散布で小松菜のえぐ味を低減させる可能性があることが示唆されました。

 

研究背景・目的

近年、持続可能な社会の実現に向けて、環境に配慮する取り組みが求められています。畜産分野においては、家畜排泄物の保管・処理方法の効率的かつ有効な利用方法も重要となります。家畜排泄物の糞は、微生物処理により堆肥として圃場へ還元されるのが一般的であり、尿などの液体成分ついては好気または嫌気の微生物処理をしたのち、土壌散布されるのが一般的です。しかしながら、当該処理液の植物栽培への有効性を検証した報告は少なく、さらに適切な処理がされていない処理液は単位面積あたりに対する投下量が過剰となり環境汚染となる場合もあることが判明しております。

当社は環境汚染の原因ともなる液状の未利用バイオマス(家畜排せつ物)である牛の尿を独自の発酵技術で無害化し、付加価値をつけた商品の製造・販売をするアップサイクル型循環システムを実施しています。これまでに環境大善㈱は㈱リバネスとの共同研究において、処理液の有用性を確認すべく、牛の尿を微生物処理した液体「液体たい肥 土いきかえる」を使用して、土壌での栽培に比べ栽培環境の制御が簡便な水耕栽培にて小松菜への効果を調査しました(前回のリリースはこちら)。

その結果、小松菜の水耕栽培においては、良好な影響を示したことから、今回はより一般的な施肥体系に土いきかえるを与えることによる植物への影響を調査しました。

 

研究成果

試験は、10Lプランター(幅約60×奥行約21×高さ約16cm)に無肥料の園芸用土を充填し、培養液のみで栽培を行う区(以下、対照区)、培養液に土いきかえるを55倍希釈となるように添加し栽培した区(以下、55倍区)、培養液に土いきかえるを250倍に希釈となるように添加し栽培した区(以下、250倍区)を設けました。培養液には100倍希釈のベジタブルライフA(OATアグリオ株式会社)を使用し2週間おきに500 mLずつ散布しました。栽培条件はPPFD80 μmol m-2s-1の光強度で16時間照射し、草丈、葉数について小松菜の種子を播種して14日目から49日目まで1週間毎、SPAD値については播種後21日から49日まで1週間毎に測定しました。播種後56日目に小松菜を収穫し、地上部と根に分け、地上部は生鮮重量と搾汁後の硝酸態窒素、根の乾燥重、葉のクロロフィル量((一財)食品分析開発センター)を測定しました。

草丈は、21 日目から42日目まで55倍区が対照区に比べ有意に高くなりました。葉数は、42日目以降で55倍区、250倍区が対照区と比較して有意に高くなりました。 SPAD値は、49日目では、55倍区が対照区、250倍区と比較し有意に高くなりました。

図 1 栽培14日及び21日目から49日目の各測定結果の経日変化

(A)は草丈、(B)は葉数、(C)はSPAD値の経日変化を示している。また、各データ3反復(1反復3個体)の平均値であり、シンボル上部または下部のアスタリスクは対照区と統計的に有意な差(p<0.05)があることを表し、上下のバーは標準偏差を示している。

 

対照区、55倍区、250倍区での栽培28、42、56日目の観察画像を図2に示しました。特に生育初期(28日目)の段階で対照区と比べ、55倍区および250倍区で小松菜の良好な生育が確認できます。

図2 小松菜の観察画像

A列は対照区、B列は55倍区、C列は250倍区の真上からの観察画像。上段は栽培28日目、中段は42日目、下段は56日目の画像である。

 

茎葉生鮮重は、55倍区、250倍区が対照区と比較し有意に高くなりました。硝酸態窒素は、55倍区が最も低い値を示しましたが、各処理区とも大きな差はみられませんでした。クロロフィル量は55倍区が最も高く、次いで250倍区、対照区の順となり、図1 (C)のSPAD値でも示しているように、土いきかえるの散布による葉色の向上が示唆されました。根長、根重はともに55倍区が250倍区、対照区に比べて有意に高くなりました。

図 3 栽培56日目の小松菜各測定結果

(A)茎葉生鮮重、(B)は硝酸態窒素、(C)はクロロフィル量(D)は根長(E)根乾物重の測定結果を示している。また、測定結果は各処理区連続する5個体3反復の平均値であり、グラフ上部にあるアスタリスクは対照区と統計的に有意な差(p<0.05)があることを示し、上下のバーは標準偏差を示している。

 

今後の展望

近年、世界の人口増加による食料需給を満たすため、農業においては、作物生産の効率化、延いては単位面積当たりの収量増加が求められています。そのようななか、本試験では、家庭菜園や農家が実際に作付している土耕栽培に近い条件の下、一般的な施肥体系での小松菜栽培へ土いきかえるを施用することにより茎葉生鮮重が増加し、葉色も濃くなり、植物へ良好な影響を与えることが明らかとなりました。この結果により、「液体たい肥 土いきかえる」の有効利用が将来の食料増産に寄与する可能性が示されました。

今後も環境大善株式会社は土いきかえるが植物に与える効果の作用機序、異なる希釈倍率や散布時期により得られる効果ついて明らかにする必要があると考えています。また、本試験は葉菜類である小松菜にて試験を実施したため、根菜類に対する土いきかえるの効果も明らかにして参ります。

 

補足説明

・アップサイクル型循環システム

公害の元となる牛の尿(未利用バイオマス)を原料にし、消臭液、土壌改良材、水質改良材を製造し、空気をキレイにし、土と水を再生する。この循環は、酪農家から牛の尿を購入し地域経済を循環させるだけでなく、製品を使用する消費者も自動的に環境危機の解決へ加わる事になり、善の循環を起こす事ができる。

・SPAD値

植物の葉緑素の濃度を数値化したもの。

・硝酸態窒素

硝酸塩の形で含まれている窒素のこと。

・クロロフィル

緑色を発色する色素で、葉緑素とも呼ばれる。

 

お問い合わせ先

環境大善株式会社 土、水、空気研究所

研究員 加藤 勇太

電話:0157-67-6788

メール:y.kato@kankyo-daizen.jp

 

株式会社リバネス 農林水産研究センター

センター長 宮内 陽介

電話:03-5227-4198

メール:miyauchi@lne.st